暗号資産VCの名門パラダイムがAIに本格参戦 約1948億円ファンドで「暗号資産一本足打法」から脱却へ

概要:暗号資産投資で知られるパラダイムが、第4号ファンドで12億ドルを調達した。投資先は暗号資産だけでなく、AI、ロボティクス、次世代技術へ拡大。暗号資産VCマネーがAIブームに吸い寄せられる構図が鮮明になっている。

暗号資産ベンチャーキャピタルのパラダイムが、第4号ファンドとして12億ドル、日本円にして約1948億円を調達した。これにより同社は、これまで主戦場としてきた暗号資産に加え、人工知能(AI)や関連技術への投資を本格的に広げていく。

パラダイムは水曜日、今回の新ファンドについて、「まず暗号資産に投資し、今後はAI、ロボティクス、その他のフロンティア領域にも投資する」と説明した。

同社はさらに、「われわれは引き続き、暗号資産、そして市場と金融システムの再発明に投資していく」と強調。暗号資産の永久先物取引所ハイパーリキッドや、予測市場プラットフォームのカルシへの投資を例に挙げた。

パラダイムは2018年に設立され、これまで暗号資産に特化した3本のファンドで40億ドル、約6494億円超を調達してきた。そんな“暗号資産ど真ん中”の同社がAIに関心を寄せるのは、いまや暗号資産系企業までもが、急成長し収益機会の大きいAI分野へ吸い寄せられている流れを象徴している。

Source: Matt Huang

ウォール・ストリート・ジャーナルは2月、パラダイムがAIやロボティクスに投資する新ファンドとして、15億ドル、約2435億円の調達を目指していると報じていた。

報道によれば、同社の経営陣は投資対象を広げる決断を下した。理由は、暗号資産だけに縛られることで、有望な投資案件を逃したくなかったためだという。また、AIエージェントのように、暗号資産とAIのあいだには重なり合う領域もあると指摘されている。

実際、クリプト・ドットコムやコインベースといった暗号資産取引所も、AIエージェントに大きく賭けている。ユーザー向けにAIエージェント技術を提供し、さらにボットが使いやすいようプラットフォームの更新も進めている。

暗号資産マネーは沈み、AIマネーは沸騰

暗号資産系ベンチャー企業のなかで、暗号資産の外へ踏み出す動きはパラダイムだけではない。

フレームワーク・ベンチャーズは先月、第4号ファンドとして4億ドル、約649億円を調達した。この資金は暗号資産だけでなく、AI、ロボティクス、エネルギー分野への投資にも振り向けられる。

5月には、暗号資産ベンチャーキャピタルのハウン・ベンチャーズが10億ドル、約1624億円を調達。暗号資産スタートアップへの投資に加え、初めてAI分野にも投資対象を広げた。

クランチベースが7月2日に報じたところによれば、2026年上半期の世界ベンチャー投資額は過去最高の5100億ドル、約82兆8000億円に達した。これは2025年通年の投資額4400億ドル、約71兆4000億円を上回る、半期ベースの新記録だ。

その投資の主役はAI企業だった。オープンAIとアンソロピックだけで、今年上半期の資金調達額の40%超を占めたという。

一方で、暗号資産への資金流入はベンチャー投資全体の一部にとどまった。クリプトランクによれば、2026年上半期の暗号資産分野への投資額は108億ドル、約1兆7535億円だった。

パラダイムは、暗号資産以外の投資先として、自律型ドローン配送サービスのジップライン、ロボット金属加工プラットフォームのセンドカットセンド、そしてオープンソースAIモデル「ハーメス・エージェント」を開発したAI企業ヌース・リサーチを挙げている。

同社はまた、暗号資産業界を加速させる領域では「引き続き研究し、構築していく」とも述べた。その例として、ブロックチェーン開発ツールのファウンドリーとレス、AI関連プロジェクトのEVMベンチとセントールを挙げている。

つまり、パラダイムは暗号資産を捨てたわけではない。だが、AIバブルとも呼べる巨大な資金のうねりを前に、暗号資産VCの名門でさえ「暗号資産だけを見ていればよい時代」は終わったと判断した格好だ。

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