ビットコイン(BTC)は木曜日、6万3000ドル(約1,008万円)台を奪還した。だが、市場関係者の表情は晴れない。金曜日にデリビットで控える14億ドル(約2,240億円)規模のオプション満期を前に、「いったん下に振られるのではないか」との警戒感がくすぶっているからだ。
不安の火種は、米国債利回りの上昇である。市場では、米国債利回りが危険水域に近づいているとの見方があり、ビットコインの6万2000ドル(約992万円)サポートが試される可能性も出てきた。
押さえておきたいポイントは2つある。
第一に、米国債利回りの上昇は、米国の債務拡大に対する市場の不安を映しており、株式や暗号資産のようなリスク資産には逆風となる。
第二に、ビットコインのオプション市場では、プットとコールの出来高が比較的バランスしており、6万2000ドルを大きく割り込む下落圧力は限定的とみられている。
ビットコインETFからの資金流出は、まだ騒ぐ段階ではない
米10年債利回りは4.6%に近づいている。これは、米政府債務の膨張と、景気後退を避けるために今後さらに金融政策が拡張される可能性に対し、投資家が神経質になっていることを示している。
ビットコインもその影響を受けている。ナスダック100指数が史上最高値からわずか4%下にいる一方で、ビットコインは方向感に乏しい展開が続いている。
資金を吸い寄せているのは、やはりAI関連株だ。AIセクターの強気相場はなお健在で、投資マネーは株式市場へと流れ込み続けている。木曜日には、アジアの半導体メーカーであるSKハイニックスの米国IPOが需要超過となり、セクター全体を押し上げた。アーム・ホールディングスは10%上昇、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は7%高、マイクロンも取引時間中に7%上昇した。
一方、現物ビットコインETFからは水曜日に8,500万ドル(約136億円)の純流出があった。これにより、短期的な3日連続の資金流入は途切れた。ただし、この数字だけをもって「機関投資家の資金が逃げ始めた」と断定するのは早計だ。
より重要なのは、ビットコインのオプション需要が、コール、つまり買う権利と、プット、つまり売る権利のあいだで均衡している点である。
直近4日間では、コールオプションの出来高がプットを上回っている。これは、下落に備える需要がやや後退していることを示す。
ただし、今週のオプション満期はなかなか興味深い構図になっている。6万2500ドル(約1,000万円)までのコールは合計1億3700万ドル(約219億円)。一方、6万1000ドル(約976万円)より上のプットは1億2100万ドル(約194億円)となっている。
金曜日の協定世界時午前8時、日本時間では同日午後5時の満期時点で、ビットコインが6万3500ドル(約1,016万円)を上回れば、強気派は大きく優位に立つ。その場合、強気派の優勢額は1億9000万ドル(約304億円)まで拡大する。
逆に、弱気派が明確に有利になるのは6万1000ドルを下回る場面だ。それでも弱気派の優位は1億ドル(約160億円)にとどまる。追加の悪材料がなければ、弱気派が無理に攻め込むインセンティブは限定的といえる。
原油安はリスク資産への追い風になる可能性
中東情勢に一時的な停戦ムードが広がれば、景気後退への不安は和らぐ可能性がある。その場合、資金は債券のような安全資産から、株式や暗号資産などのリスク資産へ再び流れやすくなる。ビットコイン価格にとっては追い風だ。
一方で、AIセクターが引き続き強すぎることは、ビットコインにとって悩ましい。投資家の資金がAI関連株へ吸い取られれば、暗号資産市場に回る資金は相対的に細る。
さらに、米国の債務拡大を穴埋めするために、今後も大量の米国債が発行されるとの懸念もある。これが利回り上昇につながれば、リスク資産全般に重しとなる。
トレーダーが今後1週間で注視すべきなのは、米国債利回りが落ち着くかどうか、そしてイランをめぐる戦争リスクの悪化によって原油価格が再び上昇するかどうかだ。
Crude WTI oil futures (left) vs. Nasdaq 100 Index futures (right). Source: TradingView
ただ、足元ではビットコインのプットオプション買いは抑制されている。市場全体としては、6万2000ドルのサポートを守る方向にポジションが傾いているように見える。
ビットコインはいま、非常に微妙な場所にいる。満期を6万3500ドル超で無事に通過できれば、短期的には市場に安心感が広がるだろう。
しかし、本格的に上昇トレンドへ戻るには、マクロ環境からの後押しが必要だ。米国債利回り、原油価格、AI株への資金集中――これらの力学が続く限り、当面のビットコインは「上がっても限定的」という展開になりやすい。


